最後がもし「ありけり」であれば、むかし戦争があったそうだということになるが、この句は「ありにけり」。つまり、 …
福島をかの日見捨てき雪へ雪『太陽の門』
「福島」は原発事故を含む東日本大震災を指すと同時に、普遍的な災害というもの(または集団的な死)の暗喩ともなり …
龍の骨月の光に埋もれけり『太陽の門』
大きく非情な自然詠のようだ。鳥瞰図の風景が目前に広がる。黒々とした山に囲まれた長大な湖あるいは大河の水面に月 …
一切は定家葛の夢の中『太陽の門』
この句は、作者の第五句集『虚空』(2002年)にある〈虚空より定家葛の花かをる〉という句を受けている。200 …
青空のはるかに夏の墓標たつ『太陽の門』
本来、青空は誰の墓場にもなり得ない。墓標はそこに遺体が埋葬されたことを示す。ならば、なぜ遺体が埋まっているは …
夏の炉のしづかに人を忘れけり『太陽の門』
どこか避暑地の冷え込んだ一日であろうか。夏にもかかわらず、思わぬほどに肌寒い。外には風が吹いている夕方か、炉 …
やらふべき鬼が我とは知らざりき『太陽の門』
一口に「鬼」と言ってもこの世には様々な「鬼」がいる。少なくとも「やらふべき鬼」がいるということは「やらふべか …
口を出でて言葉さすらふ枯野かな『太陽の門』
まるで言葉が自分の意志で口を出てきたような言い方だ。でもその言葉を発するのは私たちなのだが。言葉にできない感 …
さまざまの月みてきしがけふの月『太陽の門』
毎年、中秋の名月を見てきたが、これまで見てきたさまざまの月の中でも、今日の月は格別だというのだ。しみじみとし …
筍や禅なるかな俳なるかな『太陽の門』
一晩で一メートル以上伸びることもある、驚異的な成長力を持つ筍。そこに作者は禅の大悟を見出した。 この句を特 …