「投げ入れてある椿」だけでは、壺をはみ出すように活けられた大ぶりの枝を詠んだにすぎないが、「乾坤に」とくれば …
天上を吹く春風に富士はあり『富士』
作者に対して私は、ずっと恐いイメージを持ってきた。句会などで直接浴びる眼光や発せられる言葉に私は、雨に濡れぶ …
鶯や一つ大きく明らかに『富士』
今、はっきりと鶯の囀る声が聞こえた。鶯の姿は、作者には見えていない。しかし、「一つ大きく明らかに」囀る声によ …
をみならの幸(さきは)ふ国や初薺『新年』
『新年』は、『長谷川櫂全句集』刊行後の最初の句集である。新年には、改まる意味もあるかもしれないが、2005年 …
今年また闘ふためや雑煮餅『新年』
一見、説明的である。「ため」の前後関係は目的と手段になるからだ。にもかかわらず、なぜ「ため」をわざわざ使った …
初山河まづ太陽のとほりゆく『新年』
掲句を読むと、芭蕉の『おくのほそ道』の冒頭「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」が心にうかぶ。時間は …
ずたずたの大地に我ら去年今年『新年』
作者の第八句集『新年』の冒頭に置かれた句である。新年の句、しかも句集の冒頭句でありながら「ずたずた」とは穏や …
月光に入つて眠る子どもかな『初雁』
掲句を読んですぐ思い出されるのは、櫂の師である飴山實の〈妻いねて壁も柱も月の中〉(『辛酉小雪』)である。また …
風出でて今宵の月の凄からん『初雁』
読者は掲句からどんな情景を思い浮かべるだろうか。恐らくは、どこかの山峡、灯りもない闇の中、切り立った山影に風 …
天の川この世の果に旅寝して『初雁』
格好つけた句である。若さに近い青さも感じる。 この世の果てとは一体どこなのだろう? 北海道の野付半島? ポ …