糸満市摩文仁は、沖縄戦最後の激戦地。南部に避難していた住民が戦闘に巻き込まれ、多くの人が犠牲となった。現実に …
海青くはるかな秋の来つつあり『沖縄』
「はるかな秋」が青い海を越えて今まさに来つつある。 この島で過去に何があったとしても、「はるかな秋」はいつ …
波の子は三角の貝風薫る『吉野』
この句は二通りの読み方ができる。 一つは、「波の子」がナミノコガイと呼ばれる本州中部以南の外洋に面した砂浜 …
夢よりも淡きこの世へ昼寝覚『吉野』
「この世」を「夢よりも淡き」世界だと言っているのだ。作者の世界観だろうか。われわれは現実の「この世」を確固た …
徒然やぎしぎし揺らす籐の椅子『吉野』
長谷川櫂には「籐寝椅子」を詠んだ句がいくつかある。〈籐寝椅子果実のごとき女あり〉(『蓬萊』)は印象派の絵画に …
蓬萊や夏は大きな濤の音『吉野』
大きな濤の音が聞こえている。現実に起きていることは、ただそれだけである。 蓬萊とは古代中国の伝説の山である …
大空はきのふの虹を記憶せず『柏餠』
この句は句集『柏餠』(2013)に収められている。この時には前書きはないが、2023年11月号の「古志」に「 …
衣なき人とならばや更衣『柏餠』
人は人と関わって生きていく。しかし、時には人間関係が煩わしくなってしまう。もうよい、一人で生きていきたい、と …
花菖蒲莟のうちはよかりけり『柏餠』
花菖蒲の莟は手拭いを絞り上げたような形をしている。きりっと引き締まっている。やがて莟は緩やかに解けてゆく。こ …
失恋の顔をしてゐる胡瓜かな『柏餠』
夏の朝、緑艶やかに育った胡瓜に鋏を入れるのは、恋のときめきに似る。しかし収穫時期を間違えるととんでもないこと …