『沖縄』(2015)の「沖縄」の章には、「俳句」(角川文化振興財団)2015年8月号に発表した特別作品50句が所収され掲句もその中の一句であり、のちに出版された『震災歌集 震災句集』(2017)にも収められている。
 「地球自滅」とは、戦争、災害、疫病、気候危機と今の地球が抱える問題全てが長引けば、ありえる事なのかもしれない。そのような悲惨な状況が起こったとしても宇宙の壮大な営みは止まることはないと作者はとらえている。「沈黙」の後に切れを置いたことで宇宙の静寂に一層の深みを持たせている。
 「沈黙」を用いた作者のほかの句に〈夏富士や大空高く沈黙す〉〈大宇宙の沈黙をきく冬木あり〉(共に『太陽の門』2021)がある。この三句の「沈黙」は作者が感じた天地の静けさであり、松尾芭蕉が『おくのほそ道』で詠んだ〈閑さや岩にしみ入る蟬の声〉の「閑さ」と同じ余韻が心に残る。(髙橋真樹子)

 掲句は、句集『沖縄』の「沖縄」五十句のなかの一句である。主に、沖縄の自然と、今なお残る戦争の爪痕を詠んだ句が並ぶなかでも、異色の一句と言えよう。
 人類は、現在も戦争を繰り返している。原発事故しかり、パンデミックしかり、地球温暖化しかり。確かに、人類が自滅する未来は近づいているのかもしれない。ただ、作者は、「人類自滅」ではなく、「地球自滅」と詠んだ。「以後の沈黙」は、前者であれば、人類のいなくなった静かな地球を意味するが、後者であれば、地球なき後の宇宙空間の静けさを想起させる。雄大な天の川の下、作者の心にあるのは、人類の歴史も、地球という星の存亡も、大宇宙のなかでは小さな出来事にすぎないという、無常観や諦念であろう。
 句の作りとしては、上五中七に「自滅」「沈黙」という熟語が並び、かつ、「チ」「ジ」「ツ」と続く破擦音が緊張を生むが、下五「天の川」の語感と響きが、一転して大らかな印象へと句を転換させている。(田村史生)

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